教育者や初心者にお勧めの良書、初めての哲学思考を読んだ感想

哲学の痒い所に手が届く良書だった。初心者にもお勧めだし一般の人間に哲学の必要性を教える立場の人間にも有効であろうと思われる。

哲学は科学と宗教と何が違うのか

よく言われるのが哲学は宗教と何が違うのかという問いだ。この著者は宗教はみんなに信じさせる学問であり信じること自体が目的である、としている。確かにそれによって識字率が低い状態でもモラル、マナー等の教育への寄与があった。それに加えて信じる者に生きる意味を教える、という行為をしている。

対して科学は数式や記号を使って世界を構造化する、それを事実として積み重ねる学問のようだ。例えば恋愛をしているときにはドーパミンが出ている、という風に科学では説明する。そこで哲学の登場だ。哲学は「恋愛をしている」という意味を説明しようとする。なぜ僕はあの子を綺麗と思うのだろうか、好きだと思うのだろうか。大変不可思議である。これを説明しようじゃないかと哲学は言う。

相手を論破することをやめた学問

哲学をさかのぼると何千年もの歴史の積み重ねであることが分かる。アリストテレスやプラトンなどさかのぼったらその歴史は紀元前まで行く。その特徴は師弟関係にあった哲学者や思想家は多くいたものの、弟子は師匠の優れた論を受け継ぎながらも論理的に間違っているところは批判をしたことだ。この論理的な、というところがポイントで間違っている部分や矛盾している部分を永遠と追及することではない。そこを突いても建設的な意見が出ずに対話の意味がなくなってしまう。対して現代の人間は勝ち負けとか論破されたされないを気にするしそれがエンタメになってしまっている。

現代で行われている競技ディベートをしていても問題は解決せず話し合いから自己了解、他者了解ができない。そこから共通了解が生まれない。哲学は相手を論破するための学問ではなく共通了解を得るための学問なのであるという主張だ。

質問や議論自体が罠かもしれない

ここまででも大変勉強になる本だったんだが現在の人間が陥りやすそうな話題などもあらかた哲学の人間は一定の答えを出しているというのだ。例えば「神はいるのか」「教育は自分の為のものか、国の為のものか」「有能な1人と無能な5人」などニセ問題だったり意味のない問題と言う。神の存在問題についてはカントが終わらせたので純粋理性批判を見れば解決する。教育が誰のものかという問題については問題の出し方が悪く問題を訂正したほうがいいとし、「教育を自分の為にも国の為にするにはどうすればいいか」という改変で前向きに対応した。マイケルサンデルのトロッコ問題については答えありきの質問形式としてあまりいい哲学議論ではないとしている。あくまで共通了解志向型の議論をするべきと一貫した主張をしていた本だった。