田中はゆるく生きたい

web漫画「100日後に死ぬワニ」で提示された現代コンテンツ消費への解答

カルチャー

昔、「100日後に死ぬワニ」というマンガが流行った。このマンガはTwitterで1日ごとに更新され話題になった。その後、映画化してtwitter初の4コマ漫画としてかなり成功の部類に入っている。今回はその「100日後に死ぬワニ」が見せてくれた、今の時代の消費にフィットしたコンテンツの見せ方を話していく。

現代のコンテンツ消費のされかた

漫画やアニメは普通、一番最初の話やストーリーが一番再生数が上がる。これについてはジャンルやプラットフォームは関係なく、どこで放映・投稿しようがあまり差はなく例外なくこうなる。この原因というのは話が進むにつれて離脱する人間が多くなるということに由来していると思われる。そう考えると、アニメファンの中にはシーズンごとに新しいアニメをとりあえず1話を見て今後視聴を続けるか考える、いわゆる「1話切り」という行為をしている人間がいるのも頷ける。

このようにマンガやアニメ、その他シリーズ物のコンテンツというのは1話がかなり重要でそこで見るか見ないかを決める人間が多数いる。見てくれる人間もだんだんと話を見る時間がなかったり、なんとなく見るのがめんどくさくなってしまい、離脱する人間が増える。これからのコンテンツ制作者というのはそういった気持ちにならないように構成を変えたり、山場を持ってきたりという工夫を迫られる。

現代の漫画家と言われる人たちははwebとかツイッターで漫画を見せてくれる人が多く現れ、目に触れる機会は多い。今までの感覚だとそれだとコミックスが売れなかったりするのではないかと考えてしまう。しかし、現代は大量のコンテンツが世の中にあるのでそもそも話題にならないといけない、知名度を上げないと見てもらうことさえできない。webで漫画を無料公開するのはコミックスの売り上げが下がるとか言ってる場合ではない。そこに気づくといかにコンテンツを作ることが大変で、製作者はいかにコンテンツ以外のことも考えないといけないのかが分かってもらえると思う。そのひとつのヒントが「100日後に死ぬワニ」にある。

100日後に死ぬワニのうまいところ

100日後に死ぬワニのうまいなと思うところが2つある。それは
・タイトルでネタバレをしているということ
・毎日1回更新されていくということ

これらがある。1つ目の理由だがこれはライトノベルとかで流行っている手法だ。例えば「転生したらスライムだった件」「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」などタイトルだけで自分が好きなジャンルなのか、ストーリーなのかが一目でわかる。「100日後に死ぬワニ」というタイトルは昔から感動しやすい”誰かが死ぬ物語”でそこまでの経過を見ることができる。読者はそんな気持ちで漫画を見ることができる。タイトルを見て最初からそれを期待している読者に対してタイトル通りのストーリーを描くことで読者を満足させることができる。

2つ目の理由は毎日1話を更新するというところだ。当たり前に見えるかもしれないがこれをTwitterでやったというのが大きい。1話ごとにどうやって死ぬのだろうか、とか楽しい出来事がマンガ上で行われるごとに悲しい気持ちにもなったりする。加えて、100日後の死に方が気になって見続ける人が多い、100日後死んでも前の話が気になって見る人がいる。それをTwitter上でつぶやく人間が多くなるほど宣伝効果が大きい。

「100日後に死ぬワニ」は映画化された時点で賛否両論があった。否定的な意見を言うとTwitter上でリツイートやいいね!の数字は稼げるが実際にお金を払って映画館に行くほど見ている人の顧客ロイヤリティが高くないのだ。ただ、それでもオリジナルのコンテンツを流行るきっかけのギミックは学ぶことが多いと感じた。これはコンテンツが多くなりすぎてしまった現代でのコンテンツ消費のされ方に対して一つの解答なのではないか。