「獏の檻」以来道尾秀介の作品を読むのは2作目。
前に読んだ「獏の檻」では難しい設定ながらも本格的なミステリを厚みのある展開で読むことができた。
今回も読むのが楽しみだった。
この記事内にネタバレはないがこの作品の魅力を半減させるため目を通すのはあまりオススメしない。
物語のあらすじ
ひょんなことから詐欺を生業としている中年二人組。
彼らの生活に同居人が増えやがて奇妙な生活が始まる。
それぞれの人間の過去がその生活に影を落とす。
やがて彼らは壮大な計画を立て始め・・・。
感想
SFやファンタジー以外の物語は「この展開はあり得ない」と思われる確率が上がると思っている。
ゆえにミステリは変な行動が目につきやすい。
それでなくとも主人公の的確な推理に読者を酔わせたいときは物語の中で読者に情報を与えずに物語が進みやすい。
この物語は「あり得ないけど一般小説としてこのチープな展開はあり得る」という考えを物語の終盤まで思ってしまう作品だ。
よくよく考えると、あり得ないあるいは変な行動・展開が目につきすぎるのだ。
上手くいきすぎて読者が考えるのをやめる。
「あーそういう上手くいく感じで物語が進むのね」と思った瞬間、著者の掌の上だ。
僕も物語を読み進めるうえで「上手くいきすぎでは?」「裏に何かあるのではないか」という疑いを抑えてしまったのだろう。
その疑いを最後まで抑えられ最後の最後にどんでん返しを食らう。
オセロの白が一気に黒になる感覚。
全てが間違ってたのだ。
それがページをめくるスピードを速めた。
最後の30ページくらいはものすごい速さで読めるだろう。
おもしろかった。