そういえばそろそろ土用の丑の日が近いということでふらっと寄った。
内観だけならカウンターだけでこじんまりとした普通の居酒屋みたいだ。
お目当てはワンコインうな丼。
ついでに肝吸いもいただく。
財布の中身があればもっと派手にいったかもしれないが貧乏人の身分ではそうもいかない。
唯一の客である後ろのサラリーマンはビールか何かをあおりながら話し込んでいる。
うなぎと酒は合うんだろうか、と疑問に思ったが酒飲みにそんなことは関係ないだろう。
僕もいつかはうなぎを食いながらビールを飲む人間になりたいものだ。
うな丼と肝吸いは客が少なかったせいかすぐ提供された。
安さがウリということで量はそれなりだったが味はうな丼も肝吸いも悪くない。
うな丼を食べてる途中になぜか、昔母親が作ってくれたうなぎを思い出した。
あれは別に高くもない普通のうなぎだったかもしれないが幼少期の僕は喜んで食べていたもんだ。
この年頃になると東京の飯屋よりも田舎の母親が毎日作ってくれた飯がうまかったことに気づく。
自分が金がなくおいしい店を回れないだけなのか母親の料理の腕がすこぶるよかったのか・・・。
どっちにしろそろそろ田舎に帰ってあのなぜだかうまい母親の料理を堪能すべき頃かもしれない。
うまいうなぎを食いに来たはずがなぜかそんな感傷に浸りながら僕はごちそうさま、と控えめな笑顔でお金を払い店を出た。