田中はゆるくいきたい

あなたの「正しさ」は社会を崩壊させる

その他

この前「ただしさに殺されないために 声なき者への社会論」を読んだ。自分が常日頃違和感を感じる事象と近いことが書いてあったり、著者の視点・考えを学べてよかったと思う。

僕自身の最近の思考を説明しておくと最近の人間は「正しさ」を間違って扱っているのではないかと感じる。ここでいう「正しさ」は「普通、常識」と言い換えても良い。そのあなたの「正しさ」は「手っ取り早く自分を納得させるために、外部から安易に答えを求めている」だけかもしれない。そういった考えを頭の片隅に入れて以下の文章を読んでくれると理解が早まるはずだ。

正しさに対する疑問

この本で行われている事は一般的に「正しい」と言われていることへの疑問の列挙になっている。自分は興味が薄い分野だが、いわゆるポリティカルコレクトネスやフェミニスト、社会的弱者に対しての言及が多い。

僕としては最近の「正しさ」をかざす行為が「昔からの常識、普通」「大多数の意見」「海外の思想」等で語られがちだと感じている。そしてその動き自体があまりにも自分で考えられない人たちの鈍い思考なのではないかと違和感を感じるので大変興味深い内容だった。

冒頭の繰り返しにはなるが、最近の様々な動きが個々の頭で考えることが出来ない人間たちが手っ取り早くテレビやネットの意見、海外の政治的思想に染まり自分に都合の良い思想を取り入れているだけに見える。そういう意味で考えとしては納得できるものも多かった。

正しさがあなたを殺すとき

こういった「正しさ」を固定化した先に何があるのか。答えは地方の現状や日本全体の数字に既に表れている。もう知っているかと思うが日本は幸福度も生産性も出生率も若者の比率も高くはない、高いのは平均年齢と自殺者数ぐらいだ。その現状でそのままで良いと考える人間が大勢いてなおかつ、その状態が「正しさ」だと思っている。そういった社会では例外的な人間や事象に柔軟な対応をできず、例えば社会から隠された弱者が「普通、常識」から外れてしまい生存が難しくなる。

他人を否定するために、自分を手っ取り早く納得するために吐いた「正しさ」が自分を殺す日は絶対にやってくる。それは自分が老化した時かもしれないし、身体障碍者が身内に現れた時かもしれない。自分の生まれた、育った町がシャッター街になり消滅した時かもしれない。

もしあなたが「正しさ」を変えずにずっと勘違いしたまま死ねたら幸運だ。しかし、その場合あなたの「正しさ」が間違っていると他人が教えてくれなかっただけか、自分が違う価値観を理解できなかっただけだ。それを純粋に喜べるだろうか。

田舎も東京も正しくはない

実体験を述べると、田舎の人間ほど「正しさ」にうるさい。しかし、もはや田舎は「正しくない」。なぜなら東京をはじめとした都市部で働いたほうが収入は大きくなるからであり、人口も都市部に勝てるわけがないからである。資本主義において仕事やお金、人口が多い場所は正義であり正しい。この考えで行くと田舎に住むのは正しくはない。それ以外の「正しさ」をかざしても若者は田舎に残らない。

この問題を「東京に住めばいい」で解決とみなす人もいるだろう。しかし、今の地方の現状は未来の東京の姿である。これまで散々地方の人口を吸い取ってきた東京の人口は、2030年までに減少に転じる。残念ながら東京は出生率も47都道府県で最低レベルである。

https://www.yomiuri.co.jp/national/20230216-OYT1T50080/

東京都は、都内の人口が2030年の1424万人をピークに減少に転じるとする推計を公表した。21年の前回推計時と比べ、人口減が始まる時期が5年延びたものの、都は「首都東京でも人口が減少していく事態は避けられない。持続可能な都市を目指す必要がある」としている。

読売新聞オンライン

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC048880U1A600C2000000/

厚生労働省が4日発表した2020年の人口動態統計によると、東京都の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産むとされる子供の数)は1.13と、19年(1.15)と比べて低下した。東京の合計特殊出生率は全国で最も低く、子育て支援の充実などが求められている。首都圏1都3県でみると神奈川は1.25で0.03ポイント低下。埼玉は1.26で0.01ポイント下がった。千葉は横ばいの1.28だった。全国平均は1.34で、1都3県はいずれも下回っている。

日本経済新聞

いずれ東京でも人口は減少し始め、世界トップの平均年齢を誇る日本の首都らしく、中年だらけの都市になる。ちなみに日本の平均年齢は48歳で東京の平均年齢は44歳である。東京に来たら確かに自分は生きていけるが、だからといって社会がいい方向に向かうわけではない。

「100年後や50年後のことなんてどうでもよい、自分さえ幸せであれば良い」という人がいるがそれこそ田舎の人間が昔考えたことだ。その結果、田舎の人口は減少し少子化に歯止めがかからなくなった。そして、その思想のおかげで田舎には廃墟やシャッター街という観光資源が豊富に存在するようになったのだ。このように「自分さえ暮らせれば良い」が何も社会に貢献しないのは上記の例で自明である。

「お金のために働いて家や家族を養う。それが当然だ」は今までの「正解、正しい」だったがその人間たちはこれからの時代では「不正解、正しくない」である。なぜなら自分がいくらお金を持とうが土地を持とうが投票権を持とうが家族を持とうが住んでる町、社会、国が崩壊したら元も子もない。実際に僕の身内はそういったシャッター街になってしまった町に住んでいる。僕はそのことについてどうすることもできない。

効率よく社会を崩壊させる方法と1億2000万人の加害者

効率よく社会を崩壊させる方法がある。それは頭が悪くて価値観が古い人間に「金、土地、投票権」等を集中させることである。そんなことをする地域や社会がこの進んだ現代であるとは思えないが、もしそのような状態に陥っている場所があるとしたらそれはいずれ消滅するであろう。そういった場所から価値観が新しい人間や賢い人間、若い人間はすでに離れているからである。

実はこの国では政治家や金持ちが悪いのではなく1億2000万人の国民全員が「正しさ」の固定化をし、それを他人に強制することによってゆっくりと国を崩壊に向かわせているのだ。これらの人間は犯罪における加害者側である。その自覚を持つことは天と地の差があるのではないだろうか。