田中はゆるくいきたい

なぜ人類発祥の地アフリカはヨーロッパ人に植民地化されたのか?銃、病原菌、鉄の感想

一言で言うとこの本はなぜヨーロッパの人間やアメリカの人間がアフリカやポリネシアを植民地化できたのかという話だ。その疑問の答えは「銃、病原菌、鉄」というタイトルにもあるようにそこら辺がキーワードになる。ということでぼちぼち本の内容を話す。

なぜヨーロッパの人間は植民地を広げられたのか

歴史とか真面目にやってきた人間のほとんどが抱くであろう疑問が”なぜヨーロッパの人間は植民地を広げられたのか”だろう。疑問をもっとわかりやすくすると”人間として生まれてほとんど個体として変わらなかったのになぜヨーロッパの人間は人類の発祥の地であるアフリカの国々を植民地化できたのか”である。

これはいろいろな理由が考えられそうだがこの本では明確に結論が書かれている。ちなみにこの本の評価としてそこの結論まで至るのにちょっと冗長という批判もあるし僕もそう思った。結論から言う。この疑問の答えはヨーロッパの人間は食糧生産を安定的に効率的にできたからだ。アフリカの人間や他の島国の人間は食糧生産を安定的にできなかった、そのたった1つの理由で植民地にされる側になった。ならその食糧生産とはどのようにほかの文明より先んじてできたのか。

  • 銃などの技術面で先に進んでいた
  • 字を読み書きする能力が広まっていた
  • 探検や征服に資金を提供できた

と本書では解説されている。それぞれの話は本書の根本だし実際に買って読んでほしい。雑に解説するとヨーロッパはもとから君主が独立して土地を支配していて常に競争が生まれている土地でもある。この競争が非常に重要でいろいろな社会があると衝突が起き競合が常に起きる。そこで技術を導入して先に行くことにより文化や思想が発展し続けたのがヨーロッパ。また、技術そのほかの発展で食糧の余剰生産ができる。そこで働く人間の食糧だけでなく後に語る官僚や書記等などを食わしていくことができたのだ。

なんかよくわかんないことをしてる人を食わせる理由

この食糧生産の余剰分を書記など官僚に食わせることができたというのが面白い。個人的にこの余剰生産された食料を使うというのがとても重要なのだ。それはなぜか。変化する時代においては、変化についていける思想や技術が必要なわけでそこに対応した人間というのは必ずしも戦争で活躍できる軍人や農家ではないからである。

今すぐに結果が出ないけど長期的に見たら利益になりそうじゃない?という職業やジャンルに対しても寛容になる社会があるからこそ列強や今でいう先進国になれたのかもしれないと考える。だとしたら即物的な職業や有名無名を気にしすぎる、あるいはそれで食糧や報酬の上下が決まってしまう現代や世界はやや危険ではないかと言える。

ここではニートとか無職を許容するのか、とか長期的な利益って何?ということを論じたくはないしそこに詳しくはないので話さない。ただ歴史上で名を馳せた国はどういうわけかそこら辺の人にも折り合いをつけて利用してきたようだ。

歴史と科学の違い

この本は実験や著者の研究からなるデータと分析、体験ベースの良書だと思う。著者はいわゆる科学系の人間だがこういった考古学、言語学を混ぜた本書を作っている。そして科学と歴史の違いについて言及するページがあった。曰く、科学者は分子が衝突する究極の要因がなんであるかはほとんど考えない、反して、歴史学者は戦争が起こった期間と起こらない期間の究極的な要因を考える、と違いを表現している。

また人類社会の歴史を理解するのは科学分野の歴史自体さほど意味を持たず個体差の少ない科学の問題を理解するより難しいと言っている。僕は科学者でもないし歴史学者でもないがここら辺が下品な文系理系論争の終止符になればいいのになと思いながら見ていた。多分あのクソみたいな論争はどんな良書が出てきても終わらなそうだけどね。